日本人が外国語を学ぶのに不向きな科学的な2つの理由
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皆さん、外国語は勉強しているでしょうか。
英語にしろ、ドイツ語にしろ、中国語にしろ。
我々、日本人にとって外国語を学習するのは容易ではありません。
一方で、世界を見渡せば日本人より遥かに楽に英語をマスターする国民がいるのはご存知でしょうか。
例えば、オランダ人の90%以上は英語を話すことができます。
スーパーでアルバイトしてるおばちゃんも、割と高確率で英語を話せるのです。
それもかなり流暢に。。。
というのも、実は日本語のネイティブであるということが外国語を学ぶ上で非常に不利であるということが科学的に説明できるのです。
ということで今回は、日本人が外国をなかなか習得できない科学的な2つの理由を解説していきます。
最後に、おまけに面白い研究結果も紹介します。
私たち日本語話者には家族がいない?
現在、世界には諸説はあれど、5000~6000語が存在すると言われています。
しかし、これは約5000言語以上の言葉が最初からあったわけではなく、起源となる1つか、いくつかの言語から派生したと言われています。
言語の起源は1つなのか複数なのかというのは言語学者の中で意見が別れていて、
現人類であるホモ・サピエンスの起源はアフリカの1人の女性だったというのは確実視されていますが、その時点ですでに言語があったとする1言語起源説と、それなら文法が異なる言語が存在することは考えにくいとする複数言語起源説があります。
言語の家族語族とは。
つまりは、現在の言語は起源となる数少ない言語から派生して増えて行ったと言われています。
生物の進化と同じような感じです。
そして、ある1つ言語から派生して出来た言語をまとめて言語の家族「語族」といってグループ分けすることができます。
下の地図は、語族を色で分けた語族マップです。
ヨーロッパを見てもらうと面白んですが、ほとんど同じ緑色で天下統一さていると思います。
ヨーロッパの言語は「インド・ヨーロッパ語族」という語族に含まれており、つまりは同じ先祖を持つ家族なんです。
英語、ドイツ語、オランダ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語などなど家族なんです。
日本語には家族は。。。
一方、日本語はどうなのか。
日本は赤色で塗られていますが、日本と同じ色で塗られている国を見つけることが出来るでしょうか。見つけられないと思います。
日本と同じ色で塗られている国を見つけたら大発見なので、今すぐ言語学者に電話するべきです。
冗談はさておき、
日本語を含む日本語族には、日本語以外の言語はありません。
そう、日本語と同じ先祖をもつ言語は言語学上存在が認められていないんです。
インド・ヨーロッパ語族にはあんなにも家族がいたのに、日本語には家族がいないんです。
つまり、この言語学的事実から何が言えるのかというと、
「日本語は同じ系統と分類できる言語がない非常にユニークな言語である。」
ということです。
なので、私たちが外国語を勉強するのは厄介なわけです。
あれ、中国語と漢字は一緒じゃん?って思いませんでした?
実は、中国語と日本語も言語学的には同じ系統ではないんです。
というのも、漢字というのは邪馬台国の時期に中国から輸入されて、それを元々あった日本語に無理矢理当てはめたものですよね。そして、無理矢理付けたのが「訓読み」です。なので、元々あった日本語には漢字がありませんし、その言語には中国語との繋がりはないとされています。
脳科学的に日本人はハンデを持っている?
では、脳科学的に見て日本人がどのような点でハンデを背負っているのか。
まず先に、脳では言語をどのように操っているのかという複雑な話からさせてください。
(全力で簡潔にしますので。)
言葉を操るウェルニッケ野とブローカ野
人間は、脳の中にある「言語野」という部分を使って言語を操っています。
そして、その言語野は2ヶ所に分かれて存在します。
その2つの部分を「ウェルニッケ野(感覚性言語野)」と「ブローカ野(運動性言語野)」と言って、それぞれが別の役割を持っています。
ウェルニッケ野は、「情報」⇄「言葉」の変換を行っています。
例えば、
上の写真を見たときに、
「赤ちゃんがパソコンを使っている。」
と言うためには、
と、「写真からの情報」を「言葉」に置き換えないといけない訳です。
逆に、“赤ちゃんがパソコンを使っている”という「言葉」を聞いたり読んだりした時に、その意味を理解するには、上の写真のような「情報」に置き換えないといけないのも然りです。
その置き換えを行っているのがウェルニッケ野です。
一方で、ブローカ野では、「言葉」を表現する分野です。なので、主にアウトプットの役割を持っています。
どういうことかと言うと、
「子供」という言葉の意味を理解して次に表現するためには、「こ・ど・も」という音に変換したり、「こども」という文字に変換したりしなくてはなりません。
また、文章の場合は文法を整えることもしないといけません。
その、「音への変換」や「文字への変換」、「文法の構成」を行うのがブローカ野です。
ウェルニッケ野のみが損傷すると“言葉”⇄“情報”の置き換えが出来なくなるため、その患者さんが上の写真を見ると、
「小さい大人が銀の板に手を当てがっている。」というふうに、不自然な言葉のチョイスになったりします。ですが、ブローカ野が損傷していなければ、話すことには問題がないので、こういった発言はスムーズにできるそうです。
一方、ブローカ野が損傷すると、意味は理解できるが「あすぅんでい、、、る、、パスゥクン、、、を、あくぁつぁん、、は、、」というように、発言や文法がおかしくなるそうです。
ですが、脳の損傷が一部にピンポイントに来るのは稀なケースです。
外国人はウェルニッケ野が優れている?
外国人と一緒に勉強したことがある人は誰もが感じると思うのですが、
言語の習得において、僕ら日本人が1日必死に勉強しても、外国人が仕事の片手間に勉強して伸びるスピードをきっと超えられません。
何がそんなに違うのかというと、圧倒的にリスニングの成長に差が出ます。
というのも、彼らはリスニングに関しては数ヶ月で日常会話レベルになったそうです。それも、文法にまだまだミスが多いのにです。
これがなぜ起こるかと言うと、ウェルニッケ野での適応の違いです。
ドイツ語とオランダ語は非常に似ている言語なのですが、ルームメイトのドイツ人曰く、
「オランダ語は勉強しなくても7割ぐらい分かるよ。」らしいです。
あと、外国で語学学校に通っているんですが、そこでは自分は間違いなくクラスで一番の勉強量を誇っているのに、向かいの席のポルトガル人には勝てませんし、隣の席のカナダ人は自分の専属TAさんのようになりつつあります。
語族のところで、同じ語族の言語は非常に似ていると言う話をしたのですが、
似ているということは、多くの単語が同じか、似ているんです。
特に、インド・ヨーロッパ語族の言語はラテン語の影響が強いので、単語がかなりの割合で被っています。
そして、母国語と被っている単語は、ウェルニッケ野で僕らより圧倒的にスムーズに変換できます。
なぜなら、その単語は母国語とほぼ同じだから。
わかりにくい場合は、「I like a panda」と「I like a bear」をGoogle翻訳に発音させて、どちらの方がすんなり意味を理解できるかを試して見てください。
パンダの方がすんなり頭に入ってくると思います。
このウェルニッケ野での変換速度の違いが、外国人が日常会話のスピードに数ヶ月で辿り着いてしまう理由なのです。
逆に、日本語を学ぶ外国人が「日本人って早口だよね。」って言いがちなのは、そういう理由でしょうね。
おまけ:日本人は本能的に話している?どいういうことかというと。
少し話の趣旨とズレるのですが、
日本語を話す私たちと外国語を話す外国人の間に、脳での言語の処理の仕方が違うのではないか。
という可能性を示す研究があるんです。
これは、「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に掲載された論文なんですが、
英語のようなSVO型言語を話す人と、日本語のようなSOV型言語を話す人を集めて、「女性が乗っ部を回す(Woman twists knob)」のような簡単な内容をジェスチャーで伝えさせたんですね。
すると、ジェスチャーをした順番はSVO型の人もSOV型の人も、
「女性(S)、ノブ(O)、回す(V)」というS-O-Vの順番でジェスチャーしたのです。
つまり、SOV型の方がより自然な情報の表現方法であり、私たちSOV型言語を使う人がSVO言語を話すのはそう言った部分で不慣れなのかもしれません。
参考文献